マグロの漁獲制限 世界と日本

マグロ漁獲量の推移

世界中で乱獲のためにまぐろ類の個体が減少しています。

FAO Capture production によると世界のマグロ漁獲量は、2003年をピークに減少しています。

マグロのなかで高級といわれるクロマグロ(太平洋クロマグロと大西洋クロマグロ)、ミナミマグロの漁獲量は、1996年をピークに減少しています。

FAO Aquaculture production によると世界のマグロ養殖量(2010年までのFAO統計に日本の生産量は含まれていない)は2004年まで急激に増大していました。その後、まぐろ類の地域漁業管理機関による漁獲制限もあり減少傾向です。

海外では、地中海で大西洋クロマグロ、メキシコ等で太平洋クロマグロ、オーストラリアでミナミマグロの成魚を夏場に漁獲し、冬場まで蓄養してそのほとんどを日本に輸出しています。

日本は多くのクロマグロ、ミナミマグロを消費しています。2010年のFAO統計、漁業・養殖生産統計(水産庁)、財務省貿易統計から集計した世界全体の漁獲量+養殖量と日本の消費量(日本漁船の漁獲量+国内での養殖量+輸入量)を以下に示しています。

日本からの2010年の輸出量は100トン以下でしたので、この図では無視できる量です。

まぐろ類の地域漁業管理機関

多くのマグロ類の漁獲が減少しているために、地域か魚種別にまぐろ類の地域漁業管理機関(RFMO:Tunas Regional Fisheries Management Organization)が設立され、漁獲制限などの資源保護を進めています。我が国は全てのRFMOに参加しています。会議開催状況はこちら(ただし、サポータ向け)。

RFMO クロマグロ ミナミマグロ メバチ キハダ ビンナガ
ICCAI 1969年発効
大西洋まぐろ類保存国際委員会
大西洋 大西洋 大西洋 大西洋
IOTC 1996年発効
インド洋まぐろ類委員会
インド洋
IATTC 1950年発効
全米熱帯まぐろ類委員会
東部太平洋 東部太平洋
WCPFC 2004年発効
中西部太平洋まぐろ類委員会
中西部太平洋   中西部太平洋
CCSBT 1994年発効
みなみまぐろ保存委員会
ミナミマグロ

一方、他の国際機関でもマグロ資源について、議論されています。2009年にモナコが大西洋クロマグロをワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)付属書Ⅰ(商業目的の国際取引の全面禁止)に掲載することを提案しましたが、2010年3月に開催された締結国会議の席上、大差で否決されました。今後、他の国際機関でも話題にのぼる可能性もあります。

ICCAT総会におけるクロマグロの漁獲枠(東大西洋と地中海)の推移

2年毎に、東大西洋と地中海でのクロマグロ漁獲枠がICCAT総会で議論され、漁獲枠は2007年から約44%に減少しています。ICCATにおける漁獲制限で、地中海での蓄養業者の活動が大きく低下し、我が国への輸入量の減少傾向につながります。2016年11月に開催された年次会合で2017年の漁獲枠が拡大されました。

  漁獲枠と決定年
漁獲年 漁獲枠(決定年) 2010年 2008年 2006年
2007年       29,500トン
2008年       28,500トン
2009年     22,000トン 27,500トン
2010年     19,950トン 25,500トン
2011年   12,900トン 18,500トン  
2012年   12,900トン    
2013年 13,400トン(2012年) 12,900トン    
2014年 13,400トン(2013年)       
2015年 16,142トン(2014年)      
2016年 19,296トン(2015年)      
2017年 23,155トン(2016年)      

ミナミマグロの漁獲制限

ミナミマグロの漁獲枠も、2006年からその約63%に減少しています。しかし、2012年から2014年にかけて段階的に漁獲枠を引き上げることが2011年に決定され、その後2013年、2016年にも増枠が決定されました。

漁獲年 漁獲枠 トン/年 備考
2006年 14,925
2007年 11,810
2008年 11,810  
2009年 11,810  
2010年 9,449 2009年の漁獲枠から20%減
2011年 9,449  
2012年 10,449 2011年に増枠
2013年 10,449  
2014年 12,449  
2015年 14,647 2013年に増枠
2016年 14,647  
2017年 14,647  
2018年 17,647

2016年に増枠

2019年 17,647

 

2020年 17,647

 

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で採択された太平洋クロマグロの保存措置

太平洋クロマグロは日本近海(南西諸島、若狭湾沖等)で産卵し、孵化した稚魚が黒潮と対馬海流に日本沿岸を移動します。成長して、一部は太平洋を越えて北米大陸西岸に回遊し、また日本近海に戻って産卵します。 太平洋クロマグロ稚魚・幼魚が日本沿岸を移動中に漁獲されることが、太平洋クロマグロ資源の持続性の観点でひとつの課題になっています。

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は対象とする海域で、太平洋クロマグロの資源保護のために加盟国に対して漁獲制限を実施しています (200年12月)。ただし、一部の加盟国は漁獲制限に参加していません。太平洋クロマグロ回遊先の北米大陸西岸での漁獲制限は全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)が管理します。2013年も規制を継続することが2012年12月に合意された。

①各国は、クロマグロの漁獲努力量(操業隻数・日数等)を、沿岸の零細漁業を除き、2002年~2004年の水準よりも削減する。

②各国(韓国を除き)は、①の実施に際し、未成魚(0~3歳)の漁獲量を2002年~2004年水準よりも削減する。

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)

東部太平洋において、2012年、2013年の2年間の合計で太平洋クロマグロの漁獲枠を10,000トンに制限する。 この制限が、メキシコの漁獲量に影響します。

IATTCが対象とする海域

漁獲年 漁獲枠 トン/年 備考
2012年 合計で10,000
2013年
2014年 5,000 2013年6月10日から14日に開催された全米熱帯まぐろ類委員会 (IATTC) 第85回年次会合の決定
2015年 各3,300
(合計6,600を越えない)
2014年10月29日の特別総会、このうち30キロ未満の未成魚漁獲枠を1,650トンに減らす
2016年
2017年 各3,300
(合計6,600を越えない)
2016年10月12日~14日の第90回会合(再開会合)、このうち30キロ未満の漁獲比率を50%まで削減するように努力する。
2018年

日本が実施している太平洋クロマグロの資源管理

日本近海で漁獲される太平洋クロマグロの漁獲量は減少傾向です。太平洋クロマグロの漁獲尾数のうち90%以上が0~1歳魚(ヨコワ)で、 そのほとんどが生鮮品として産地から消費地に出荷され、一部(平成23年に約53万尾)がマグロ養殖の種苗に利用されています。そこで、日本では太平洋クロマグロの資源管理を次のように進めています。

(注:WCPFC:中西部太平洋まぐろ類委員会IAATC:全米熱帯まぐろ類委員会

【漁獲制限】

WCPFCの保存管理措置に基づく 未成魚(30kg未満)

九州西・日本海における大中型旋網漁業の総漁獲量を、原則として年間4,500トン未満に制限する

太平洋における大中型旋網漁業の総漁獲量を、原則として年間500トン未満に制限する

WCPFCの保存管理措置とは別に追加 成魚(30kg以上)

日本海における大中型旋網漁業の産卵期(6~8月)の総漁獲量を原則として2,000トン未満に制限する

【平成25年の特定区画漁業権の一斉切替方針】

都道府県知事が、海面で魚類養殖を実施する区画漁業権を漁協等に免許します。免許の有効期間は5年で、全国で平成25年に一斉に切り替えられます。平成24年6月、 クロマグロの資源保護の観点から水産庁から都道府県知事へクロマグロ養殖漁場の免許更新時の方針に関連して次のように通知されました。

養殖場の名称

クロマグロを養殖する場合は、必ず漁業権の免許に「くろまぐろ」を冠して免許する
(従来は、魚種名を特定しない例が多かった)

新規漁場の設定

天然種苗の活け込み尾数の増加を前提とした新たな漁場の設定、生簀規模(台数、規格)の拡大には慎重に対処(現状維持を原則とする)

人工種苗の活け込みを対象とした漁場は「現状維持」の条件付き対象外

【太平洋クロマグロ保存措置の監視】

太平洋クロマグロは日本近海(南西諸島、若狭湾周辺等)で産卵し、黒潮・対馬海流にのって沿岸を北上した後、一部の未成魚は太平洋を横断して北米西岸まで回遊します。 その後、また太平洋を横断して日本近海に戻ってきます。太平洋クロマグロの保存措置を日本だけが遵守しても資源保護は完全ではありません。 太平洋クロマグロの産卵海域を特定する調査も進んでいます。

水産庁は、国内での漁獲規制の遵守状況だけでなく、他のWCPFC,・IAATC加盟国(韓国メキシコ等)の太平洋クロマグロ漁業実態を把握するため、「まぐろ資源の保存及び管理強化に関する特別措置法」に基づいて、輸入業者から報告を求めて集計しています。

2011年から日本近海でのクロマグロ漁獲規制(日本独自規制)もあり、2012年からメキシコでの太平洋クロマグロ漁獲量(FAOが集計)が増え、2013年からメキシコからの輸入量(財務省貿易統計、天然物と養殖物の合計)が急増しています。2014年には国産養殖マグロの半分、5千トンを越えています。

生鮮マグロのままでは供給量が増大して日本で消費できないため冷凍品の輸入量が急増しています。2014年、メキシコからのクロマグロ生鮮品の平均輸入単価はキロ1,689円、冷凍品はキロ1,507円です。国産と比較して安価なこともあり、メキシコ産クロマグロは回転寿司のネタとして重宝されています。

【太平洋クロマグロ保存措置の監視強化に向けた提言】---2013年夏

わが国は太平洋クロマグロの8割を消費しています。水産庁は太平洋クロマグロの保存強化を世界に提言しています。

2013年8月22日、太平洋クロマグロに関係する業者(漁業、流通など)を集めて「①マグロ養殖が行われている地域では重要な産業となっている、②若いクロマグロを漁獲制限するために、「メジマグロ」を食べることをよそう、③漁獲量の回復がなければ産卵期のクロマグロの休漁もありうる。」と発言しています。

2013年9月2日~5日に開催された2014年4月から日本沿岸のクロマグロ漁の隻数制限」を提案しました。

【日本としての漁獲状況管理】---2014年提案、2015年から実施

30キロ未満の未成魚の漁獲量を2002-2004年平均漁獲実績8,015トンから半減の4,002トンを上限とする(2014年12月に開催された中西部太平洋まぐろ類委員会の年次総会で決議)。 2015年以降、我が国の漁獲状況は水産庁が集計して公表している。

韓国も同様に「中西部太平洋まぐろ類委員会」で決議された漁獲制限を受け、「2015年の30キロ未満の未成魚漁獲制限枠718トンの84%を漁獲した」として2015年4月1日、韓国海洋水産部は委託販売禁止命令を発動した。(2015年4月6日付け、水産経済新聞)

漁業の種類 制限 管理単位
大中型まき網漁業 2,000トン 操業海区単位
その他の沿岸漁業など
(曳き縄、定置網など)
2,007トン

全国を6ブロックに分け、ブロック毎に上限を設ける
漁獲量をモニタリングして集計し、
「注意報」:上限の7割に達した
「警報」 :上限の8割
「操業自粛」:9割5分
を水産庁から発信する

管理期間 日本海北部:2015年1月1日~2016年3月31日、太平洋北部、日本海西部、九州西部、太平洋南部、瀬戸内海は2015年1月1日から2016年6月30日。

水産経済新聞(2015年7月27日付け)によると、日本海大中型まき網漁業協議会は日本海で操業していた産卵期クロマグロ成魚漁獲が1780トンに達したため2015年7月21日操業分で今年度の漁獲を自主的に打ち切りました。

水産経済新聞(2015年7月17日付け)によると、4地域に分けられた山形県内で南部2地域に県が操業自粛要請を出しました。

水産経済新聞(2015年7月20日付け)によると、青森県は7月10日に県独自で日本海側の漁協に「警報」、太平洋側の漁協に「操業自粛要請」を出しました。

時事通信(2015年9月16日付け)によると、水産庁は漁獲量が上限値の7割に達した太平洋北部ブロック(北海道と青森、岩手、宮城、福島、茨城の各県)に「注意報」を出しました。2015年11月13日、水産庁は同地域に対し「操業自粛」を要請しました。

水産経済新聞(2016年12月27日付け)によると、長崎県、三重県で無承認操業、漁獲量報告が正しく行われていないということで水産庁と両県が現地で調査・指導する事態が発生し、水産庁は各県に改めてクロマグロ資源管理の順守徹底を要請しました。

欧州、豪州では漁獲制限が厳格に監視され、効果が出てきたため漁獲制限が緩和されてきています。しかし、西太平洋では漁獲規制は緩やかで違反操業もゼロではありません。そこで、水産庁はクロマグロ漁罰則付き規制案(2018年から)を検討しています。